ウィナーズカップ2023【別府競輪場】

ウィナーズカップ

勝者の競演

源泉より熱く、湯けむりより高みへ。

第7回ウィナーズカップが別府競輪場で開催される。格付けはGIIながらS級S班9名を始めとするトップスターたちが勢揃いの見どころ満載の大会だ。2月の全日本選抜競輪で連覇を達成した古性優作と脇本雄太の近畿コンビが今回も主役を務めるが、多数出場予定の若手選手たちが上位陣相手にケレン味のない走りで真っ向勝負を挑んでいけば波乱の結末も十分だ。

脇本雄太と古性優作の近畿コンビがやはり強力だ

ウィナーズカップは前年のヤンググランプリの出場選手9名を始めとして若手選手の出場が多いのが特徴のひとつとなっている。昨年の大会では中四国ラインの結束から清水裕友が大会連覇を達成しているが、決勝で中四国ラインを引っ張った太田竜馬、清水裕友と松浦悠士の両名の勝ち上がりに貢献した町田太我、二次予選で新田祐大を不発に終わらせた取鳥雄吾らの果敢な先行が清水裕友の大会連覇につながったのはまちがいなく、今大会も若手選手の活躍が優勝の行方を大きく左右してくるだろう。

古性優作は昨年のグランプリでは準優勝、今年1月の和歌山記念と豊橋記念も準優勝と脇本雄太を抜けずにいた。2月の奈良記念の初日特選ではようやく脇本の逃げを差して1着を取ったが、二次予選で失格して途中欠場と流れがよくなかった。しかし、全日本選抜競輪では500バンクということもあって準決、決勝と2日続けて脇本の逃げを差して連覇を達成している。2日目のスタールビー賞では脇本が新山響平に捲られるも3番手に切り替えて1着とさすがの走りを見せており、今回も脇本と古性の近畿コンビが優勝候補の筆頭だ。

脇本雄太は昨年のグランプリで初優勝、今年1月の和歌山記念と豊橋記念を完全優勝と圧倒的な強さを見せたが、東京五輪後に判明した腸骨骨折が悪化して2月の奈良記念を途中欠場した。全日本選抜競輪も初日特選予選は上がり13秒6の好タイムの捲りで快勝したが、2日目スタールビー賞は9着と万全の状態ではなかった。それでも準決は500バンクを逃げて2着、決勝も逃げて4着ながら古性優作の連覇に貢献と悪いながらも結果を残しており、今回も体調面に不安はあってもグランプリ覇者の意地と責任感をしっかり示してくれるだろう。

守澤太志は、全日本選抜競輪では準優勝と健闘した。勝ち星は二次予選での1回のみで北井佑季の捲りを差し切っての1着だったが、準決は目標の新山響平が不発の苦しい展開から自ら捲り追い込んで成田和也とワンツー、決勝も目標の新田祐大が近畿ラインのインで粘り守澤も3番手のインで詰まってしまったが、4番手に下がって立て直すと最後の直線では中割りで2着と鋭さを発揮した。今回も北日本の先導役である新田と新山が本調子とはいかないかもしれないが、それでもやはり守澤の直線強襲が侮れない。

新山響平は全日本選抜競輪がS級S班としての初のGI参戦となったが、合格点には遠い成績に終わった。2日目のスタールビー賞こそは結果は6着ながら脇本雄太の逃げを叩き切る強い走りを見せたが、準決では119期の犬伏湧也に主導権を取られ、同じく119期の北井佑季に押さえ込まれて惨敗している。それでも4日目特選では展開のアヤで裸単騎になってしまい6着に沈んだが、前日の反省とばかりに町田太我の逃げをしっかり叩き切っている。今回も若手選手たちとの叩き合いが避けられないが、S級S班のプライドをかけた走りを期待したい。

若手選手たちがラインを引っ張る

昨年の大会では中四国ラインから清水裕友が連覇を達成しているが、今回は清水の出場はなく、近況やや低調な松浦悠士がどこまで立て直してくるかが焦点となるだろう。それでも中四国は若手機動力型が多いので、ライン的にはやはり強力だ。町田太我は全日本選抜競輪では準決で敗れたが、一次予選は坂本貴史を叩いて逃げて3着、二次予選は香川雄介の好ブロックに助けられて堂々の逃げ切り、準決ももちろん逃げて香川の3着での優出に貢献しており、今回も中四国ラインを思い切りよく引っ張っていく。

犬伏湧也は2月の小倉F1では優勝はならなかったが、初日特選し11秒3の上がりタイムで逃げ切り、準決も11秒6で逃げ切りとハイパワーの走りを見せつけた。そして全日本選抜では一次予選は捲りの1着だったが、二次予選は逃げ切り、準決も結果は8着ながら新山響平や北井佑季-郡司浩平の南関東コンビを不発に終わらせる逃げを披露、4日目特選では深谷知広を相手に逃げ切りとトップレーサーたちとの対戦でも力負けしていない。昨年7月のサマーナイトフェスティバルでビッグ初優出を達成しており、2度目のGII優出も十分だ。

郡司浩平は2月の静岡記念決勝では渡邉雄太の逃げに乗って番手捲りした深谷知広を差して今年初優勝を飾り、南関東の結束力を力強くアピールした。しかし、全日本選抜では郡司がやや低調で優出はならなかった。それでも深谷知広は初日特選予選で捲って1着、渡邉雄太は一次予選が逃げ切り、二次予選が追い込みでの1着で準決進出、松井宏佑は一次予選で敗れたが、敗者戦では逃げ切りが2回、捲りの2着と個々の選手のレベルは高く、今回も南関東連係がうまく機能すれば巻き返しは可能だ。

南関東期待の新星は119期の北井佑季だ。プロサッカー選手として9年間活躍していたので年齢的には若くはないが、日本競輪選手養成所ではゴールデンキャップ賞を獲得と自転車経験は短いながら身体能力の高さを証明している。全日本選抜競輪では繰り上がり出場ながらGI初出場を果たし、準決進出と期待以上の活躍を見せた。準決は絶好の3番手に入ったことで逆に仕掛けきれずに終わったが、一次予選は逃げ切り、二次予選は捲って2着で守澤太志とワンツーを決めており、今回も積極的に仕掛けていけば勝ち上がりが期待できるだろう。

平原康多が関東の仲間とともに復活を目指す

平原康多は2月の奈良記念での落車の影響があったのか、全日本選抜では準決で敗れた。眞杉匠が脇本雄太に叩かれて平原は5番手となったが、最後の直線ではそこから伸びきれずの4着だった。二次予選も目標の坂井洋が町田太我に叩かれて5番手とまったく同じパターンとなり、そのときは2着までに入っているがレースの流れをうまく捌ききれていない様子だった。今回は関東の機動力型は他地区と比べるとやや物足りない印象はあるが、彼ら若手選手たちの力を引き出すのは平原の手腕次第と言ってもよく、今度こその奮起を期待したい。

中部勢では浅井康太がただひとり全日本選抜競輪で優出を果たした。4日間勝ち星がなかったので完全復活とは言えないが、昨年の全日本選抜競輪以来のGI優出で調子は上向きなのはまちがいない。昨年は全日本選抜競輪に続いてウィナーズカップでも優出しているので今年も期待できそうだ。二次予選は谷口遼平の逃げに乗って3着と、谷口が力をつけてきているのも浅井にとっては朗報だ。谷口は今期2班ながら全日本選抜競輪では4日間逃げて存在感を示しており、今回のウィナーズカップでは大化けの可能性も十分だ。

九州は今回も厳しい戦いになりそうだ。全日本選抜競輪の初日3Rでは中本匠栄と嘉永泰斗がワンツー、9Rでは山田英明と井上昌己がワンツーとまずまずのスタートを切ったが、九州勢は二次予選でことごとく脱落、決勝どころか準決にも進めなかった。4日間で九州勢の勝ち星に最も貢献したのは嘉永だが、上位陣が相手のレースではまだ力不足なのは否めない。山田庸平は3日目からようやく本来の鋭さが見られたが、まだまだ復調途中であり、今回こそは昨年と同様の自在戦での大暴れを期待したい。

プレイバック 中四国ラインの結束で清水裕友が大会連覇

深谷知広-成田和也の即席ラインが前受け、3番手に脇本雄太-古性優作-浅井康太の中近ライン、6番手に太田竜馬-松浦悠士-清水裕友の中四国ライン、最後尾に単騎の神山拓弥の並びで周回を重ねる。打鐘前の2コーナーあたりから脇本が別線の仕掛けを誘うように前との車間を空けはじめると、太田が迷うことなく踏み上げて一気に主導権を奪い最終ホームを先頭で通過する。神山も中四国ラインを追走し、3車身ほど離れた5番手に深谷、さらに5車身ほど離れた7番手に脇本の縦長の展開となる。太田は緩めることなくハイペースで逃げ、後方の深谷と脇本は仕掛けきれずに追走一杯だったが、最終バックから松浦がためらうことなく番手捲りを敢行、最後の直線に入ると清水が鋭く伸び、松浦に4分の3車身の差をつけて大会連覇のゴールイン、2着に松浦、最終4コーナーでようやく前団に追いついた深谷がイエローライン上を伸びて3着に入る。

冬場はバック向かい風が強くタイムが上がりにくい

周長は400m、最大カントは33度41分24秒、見なし直線距離は59.9m。別府は日本一の規模を誇る温泉街として有名だが、競輪場の駐車場の真ん中にも温泉施設がある。

直線はやや長めながら走路にはこれといったクセのない平均的なバンクだが、バックストレッチ側が道路を挟んで海に面しているので風の影響が強いのが一番の特徴となっている。

風は季節を問わず吹くが、とくに冬場はバック向かい風が強くタイムが上らない。19年2月に開催された全日本選抜ではほとんどのレースが19秒台後半から20秒台前半の上がりタイムとなっている。大会のベストタイムは11秒4で中川誠一郎が3日目の準決勝で8番手から捲ってマークしている。4日間を通して11秒台前半のタイムをマークしたのは中川だけであり、決勝では中川が単騎逃げを敢行、上がり11秒8で逃げ切って2個目のGIタイトルを獲得している。

19年の全日本選抜の決まり手を見てみると、全48レースのうち1着は逃げが7回、捲りが11回、差しが30回、2着は逃げが7回、捲りが10回、差しが16回、マークが15回となっている。やはり直線が長めなので追い込みが有利だが、逃げもかなり健闘している。そのぶんGIの大会にしては珍しく捲りがやや控えめだ。もちろん風の影響が大きいが、全体的にレースがスローペースになりやすく、その流れで捲りもスピードに乗り切れなくて不発というパターンが多い。

直線ではとくに伸びるコースはないのでラインの選手同士で決まるスジ決着が多いのも特徴のひとつだ。19年の大会では48レースのうち29レースがスジ決着となっている。それでもやはりGIの大会だけに脚力上位の選手が外、内と強襲してきて好配当というケースも少なくない。決勝戦では前述のとおり中川誠一郎が逃げ切って優勝しているが、4番手となった佐藤慎太郎が最終4角からインを突いて2着に入っている。

第7回ウィナーズカップ(GII)

イベント情報

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